Bien Cuitのレッスンで最もよくきく言葉の一つです。
「レシピって一つの目処でしかないですから。」
「ミキシングは何分ですか?」「フロアータイムは何分ですか?」そのたびにシェフが答えます。そして最後に付け加えられる言葉は
「でも数字ではなくて状態を覚えてください。この状態になったら次に進みます。」
パン作りの工程には発酵がはいります。発酵があるだけで、いったいどれだけパン作りが難しくなり、どれだけ楽しくなっていることでしょう。「作る」というよりも「育てる」という言葉のほうがふさわしく思えます。
「道具も大事だけど、でもほとんどの部分は、実は道具は関係ないんですよね。」
そう話したシェフが、私の目の前で、家庭にある道具だけで作ったパンの味は衝撃的でした。道具に合わせて、目指す生地の状態を変えていく。状態に合わせて工程を変えていく。それを実現するための知識と技術。
そうして焼きあがったパンの何と素晴らしいことか。
あまり知られていないようですが、日本ブーランジェリーのシェフのレベルは国際的にもトップクラスです。バゲットやカンパーニュ、ライ麦パンにヴィエノワズリー。どれをとってもパンの本家のヨーロッパに引けを取るものではありません。
せっかくの日本のパンの技術と文化を、もっと広く知ってもらいたい。お忙しい方にも、ご遠方におすまいの方にも。そういう想いとともにBien Cuitをはじめました。